

純真

美味しさ、空間、人
そば(全粒)は身体に良い
良質なタンパク質、食物繊維が多い、血糖値も上がりにくい、
小麦粉と比べて、健康的と言われる「そば」。
その成分を調べてみました。
データは全粒粉で、そばの実(鬼皮を除く)を全部粉にしたものですので、成分は同じと考えています。
100g当たり:【タンパク質、食物繊維】
そば 全粒紛:【12g、4.3g】
小麦 中力粉:【 9g、2.8g】
そば 内層紛:【 6g、1.8g】 更科粉相当
(出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)
→蕎麦(全粒粉)は、タンパク質、食物繊維が多い →高たんぱく穀物
そば粉全てが『高たんぱく』ではないことに注意が必要です。
アミノ酸スコア そば 全粒紛 100
そば 内層紛 データなし
小麦 中力粉 53
(出典:日本食品標準成分表 2015 年版(七訂))
アミノ酸スコアは、食品に含まれるたんぱく質を構成する必須アミノ酸の含有バランスを評価する指標です。
この数値が高いほど体内でのたんぱく質の利用効率が高くなります。
アミノ酸スコアが高く、たんぱく質含有量の多い食品は「良質なたんぱく質」食品と呼ばれます。
→蕎麦の実(全粒粉)は「良質なタンパク質食品」である
しかも、 GI値
そば 54
白米 84
白パン、うどん 95
GI値とは、「Glycemic Index」の略で、食品が血糖値に与える影響を数値化したものです。
低GI食品は消化吸収がゆっくりで、血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。
血糖値が安定しやすくなり、急激な血糖値上昇を抑えてくれるのです。
インスリンの分泌量も安定するので、糖尿病のリスクを軽減してくれます。
→蕎麦の実(全粒粉)は『低GI食品』である
反面、
更科粉や小麦粉との混合そば粉など、特に石臼挽き粉は成分割合が様々なので、注意が必要です。
蕎麦の実(全粒)を、そのまま細麺で食べたい
身体に良いという蕎麦の実(全粒)。
蕎麦の実(全粒粉)は、『良質なタンパク質食品』『低GI食品』であることがわかりました。
その蕎麦の実を、そのままの成分で、食べやすい細麺で食べたい。
ところが、麺を打つ際、タンパク質が多いほど繋がりにくくなります。
蕎麦の実の全てを使い、高タンパクのまま、つなぎなしでの細麺の手打ちは神業です。
全粒粉に近いと思われるそば粉を使っている手打ち麺は、
どうしても、太くて短めのそばになると考えられます。
でんぷんだけを取り出した更科粉、
硬くて大きい粒の甘皮部分をふるいで除いた石臼挽き粉、
小麦粉を加えた二八そば等、
従来の手打ちでは、細麺を打つために、タンパク質を減らしたり、つなぎを必要とするのです。
(甘皮:蕎麦の実の表面の緑色の部分、タンパク質や食物繊維はこの部位に含まれる)
また、タンパク質が多いと、麺はどうしても柔らかめの食感になります。
栄養面や風味に重点を置くか、
麺としての食感や食べやすさ、手打ちのしやすさに重点を置くか、
まさしく、『そば屋のジレンマ』に悩むのです。
お客様の立場で
お客様の話を色々とお聞きしました。
同じそばなのだから、栄養面などの違いはそれほどないと、考えているお客様が多いようです。
そばの栄養面の違いよりも、食感の違いに敏感なお客様が多いようにも感じます。
そばは健康的だという蕎麦の実(全粒紛)の話と、
更科粉や石臼挽き粉の話を混同している方も少なくないようです。
更には、日本の法律では、小麦粉7割・そば粉3割で「そば」と表示することができます。
でも、「そば」と書いてあれば、そば粉100%と感違いしている方もたくさんいらっしゃいました。
少なくても半分以上はそば粉だろうという方もいらっしゃいました。
お客様には、長年、なれ親しんで、好みの手打ちそばを求めてきた方々がたくさんいらっしゃいます。
どうしても手打ちでなければ、いやだと思っている方々も多いようです。
逆にあまりそばを食べない方々は、こうも考えているようです。
味や風味の濃いそばは、太くて、短くて、ぼそぼそで美味しくない!
細くて白っぽいそばは、値段が高いので、うどん・そうめんを食べればよい!
紅五郎は、どのようなそばを食べたいか、どのようなそばなら納得できるか。
紅五郎は、そばの栄養面の良さを、そのまま生かしたそばを提供したいのです。
そして、細くて食べやすい、素直においしいそばを提供したいのです。
そのためには、『そば屋のジレンマ』を乗り越えなければなりません。

甘皮を捨てずに「手打ち」を捨てる
手打ちを看板に掲げるお店が人気です。
信州のそば屋さんの看板、店舗名の前にも、ほとんど「手打ち」の文字が添えられています。
山形でも同じように、「手打ち」を前面に出すところが多いです。
手打ちの職人技、技術を競うような傾向があります。
確かに、そばの手打ちは、日本で生まれ、日本で育ち、世界中に発信されています。
大切な日本の文化のひとつです。
ならば、そば店として、手打ちでないのは、現状、致命的ではないか?
現に、手打ちではないとの理由で、町観光協会の「隠れそばの里」に入れてもらえません。
また、手打ちで、両立しているような神業のお店は、私は聞いたことがありません。
でも、
そばを蕎麦たらしめているタンパク質や食物繊維を捨てたくはありませんし、
蕎麦の実をすべて使って、食べやすい麺にしたいという思いは、捨てられません。
そば屋全体が発展するためには、多様性も必要です。
なので、紅五郎は「手打ち」を捨て、独自の手法を考案した次第です。
マシンのパワーを活用しながら丁寧に手作りするという新手法にて、冷熟全粒の細麺そばを提供しています。
省力化のためのマシンではないのです。(時間も経費も余計にかかっています)
まだまだ知られていない蕎麦の秘密があることでしょう。
蕎麦の良さをもっと、もっと引き出して、もっと身近に、もっと美味しくなるよう、
そばを追求していきたいのです。
純真にそばに向き合い、そばのおいしさを純真に引き出す、そのように、紅五郎は純真に行動します。
寒ざらしの効果も
寒ざらしそばというものがあります。
蕎麦の実を冷水に浸け、再乾燥の後、粉にして、そばを打つというものです。
お値段も、倍ぐらいにお高くなるようです。
蕎麦の実を冷水に浸けると、蕎麦は発芽準備を始めます。
常温では発芽しますが、5℃とかの低温では発芽はしません。
冷水での発芽準備期間に、次のようなことが起きていると思われます。
一つは、『甘みが増す』
二つ目は、『GABAが大幅に増える』です。
GABA(ギャバ):γ-アミノ酪酸(ガンマ-アミノビューティリックアシド)の略で、アミノ酸の一種です。脳や脊髄に存在し、神経伝達物質として機能しています。緊張やストレスの緩和、睡眠の質を高める、血圧を下げるなどの働きがあります。
『甘みが増す』
実の中に含まれる酵素と水との出会いにより、デンプンの一部が糖に変わります。
酵素が働くためには、温度も重要で、5℃の低温でどれほどの効果があるのかは不明です。
ただ、お客様から、よく「紅五郎のそばは甘い」という言葉をいただきますので、
冷水熟成の効果とも考えているところです。
『GABAが大幅に増える』
蕎麦の実を冷水に浸すと、『GABA』が増えるというのは、各機関で研究されています。
東北農業研究センターの研究がネットに公開されています。
信州大学井上 直人名誉教授著書の『そば学―sobalogy 食品科学から民俗学まで』にも、
そのデータが公開されています。
それらのデータから、冷水に浸すと『GABA』は10倍位に増えて、再乾燥で半分位まで減るようです。
一般的な寒ざらしのそば粉は、通常の5倍位になっているようです。
紅五郎では、再乾燥させずに、冷水に浸した蕎麦の実を、そのまま潰して麺にします。
あくまでも推定ですが、紅五郎のそば一人前には、約10mgの『GABA』が含まれると計算できます。
(参考までに、某大手メーカーのGABAチョコレートは5粒28mgでストレス低減の効果)
このようなことから、紅五郎では、
少しでも体に良いそばを目指して、冷熟したものを再乾燥せずにそのまま麺にすることを実践しています。
旨味の相乗効果
実は、2021年にそば屋を始めてから、2年後、2023年からめんつゆを大幅に変更しました。
最初の2年間で、3人のお客様から、いただいたご意見。
「めんつゆは美味しい、そばも美味しい、けど、合わせると美味しくなくなる」
・・・
悩みました。調べました。そして、次のようなヒントを得ました。
100g当たりの成分【グルタミン酸】:そば 全粒紛【2.2g】
(出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)
蕎麦(全粒粉)には旨味成分のグルタミン酸が(100g当たり)で2.2g(100g当たり)で含まれていること、
鰹節の旨味成分のイノシン酸とグルタミン酸の割合により、7~8倍の旨味を感じることが分かりました。
「鰹節のイノシン酸と昆布のグルタミン酸の割合が良くて、旨味数倍だっためんつゆに、
グルタミン酸が多く含まれる全粒の蕎麦をつけると、グルタミン酸の割合が大きくなりすぎて旨味数倍が消える」
このような仮説を立て、昆布だしをやめ、鰹節を増量した結果、
そばとめんつゆがけんかしているような感じがなくなりました。
特に、残っためんつゆにそば湯を混ぜて飲むと、実に美味しいのです。
全粒のそばには、それに見合った独自のめんつゆが必要だったのです。
このようなことから、2023年から、めんつゆを変更しました。
結果、今では、ほとんどの方に、食後にめんつゆとそば湯を合わせて飲み干していただいております。
ちなみに、盛りそば(並)の塩分は約2gですので、健康にもセーフといったところだと思います。
ただ、上記仮説はまだまだ研究の余地がありそうです。
実は、小麦粉のグルタミン酸含有量は、全粒そばより、多いのです。
100g当たりの成分【グルタミン酸】:小麦 中力粉【3.3g】
うどんやそうめんを食べる時には、鰹節と昆布のダブル出汁の方が美味しいと思います。
もしかして、小麦粉特有のグルテンが、グルタミン酸を溶けにくくしているのかも、とか
小麦粉より含有量が格段に多い、アスパラギン酸やアルギニン酸(約4倍)が関係しているかもです。
十割そばが極端にのびやすく、水やお湯に溶けやすいことに関係するのかもしれません。
理論はまだまだわからないですど、旨味の相乗効果に納得しているところです。

明治28年築、古民家を活かす
紅五郎は、明治28年建築の古民家で、営業しています。
120年以上も続いてきた古民家を何とか活かしたい。
このような思いで営業しています。
厨房とトイレを改修して、客間はそのままで営業しています。
メインの客間は15畳、天井までの高さは約3.7mと、気持ちの良い空間になっています。
ほかに、15畳の客間と、10畳の床の間があります。
冷暖房の要らない季節は、3間もオープンにして、使用しています。
10畳の床の間には、書院、違い棚なども、拵えられています。
広縁の向こうには、松やつつじの日本庭園も眺められます。
(10月頃~4月頃は寒さを防ぐために、半透明なプラスチック建材で、外が見えにくくなっています。)
高さ3mを超えるどうたんつつじには、ビックリです。
様々な庭石も使われており、少しずつ掘り起こしたり雑草木を切ったりしています。
(手入れがなかなか追いつかなくて、少し苦労していますけど。)
屋敷内には畑も隣接しておりますので、
お店で使う野菜は、できるだけ、無農薬の自家製のものにしています。
ナス、キュウリ、大根、ネギ、甘唐辛子、ピーマン、ヤーコン、パプリカなど、
無農薬で育てています。
梅の古木もあり、その梅で、梅みそを作り、漬物に活用しています。
母屋に連なってお蔵が2棟ありますが、今のところ、活用できていません。